ただ風のように



「いただきます」


テーブルの上には煮物やおひたし、ご飯と味噌汁が出て私達は声を揃えて挨拶し食べ始めた。


「海頼、人参は食べられるようになったか?」


「じ、爺ちゃん。後輩がいる前で勘弁してくれよ」


海頼先輩はお爺さんの問いかけに焦っているように顔を赤くした。


「そりゃ、すまんかった。しかしその顔を見るとまだ食べられるようになっとらんな?」


「人参を食わないところで死ぬわけじゃないから別に良いんだよ」


私は海頼先輩の意外な一面の発見に笑った。


「夏々海さんは何もないのか?」


「私はあまりないですね。今日、出していただいた物の中にはありません」


お爺さんの質問に私は答えた。


「海頼、後輩に負けとるぞ」


「人それぞれだから良いことにしてよ。爺ちゃん、早く食わないとなくなるぞ」


海頼先輩はよっぽど嫌だったのか会話を強制的に終わらせた。