“「・・・甘い香り。男性が好きそうな匂いね。葵も嗅いでみる?」 ”




間違いもしない。

ホテルの売店で売っていた香水の香り―。




田口先生は、

私が反応したのに気付き、ニヤリと笑った。



「・・・葵。 どうした?」


神田先生が私に声を掛けてくる。


「・・・いいえ。
 な、何でも・・・ないです。」


そう答え、

私は足早に教室へと向かった。


チクチクと刺してくる胸の痛みに堪えながら、先生の事をあきらめきれない自分への歯痒さを隠しながら・・・。