「ね、本当に何もない?」

「・・・うん。」


先生は私に確認してから、手の力を抜いた。



 ・・・バタン。


車のドアを閉め、

私が軽く手を振ってから、先生の車がゆっくりと進み出す。


「・・・すんっ・・。」


そして、

車の排気ガスの匂いと、

生ぬるい風が私の鼻先を刺激しながら通り抜けてゆく。




私は、

加速する車の

テールランプが見えなくなるまで

目で追い続けてから、家へと足を進めた―。