過去の秘箱



ペダル漕ぎながら、彼が聞いてきた。


「何で、引っ越したの?」


「お父さんの事情なんだ……」


「そんな事だったら…俺…もっと早くに気持ち伝えりゃよかったよ」


「でも急に決まった事だから……」


「メールするよ、ケー番とメルアド教えてよ」


彼に貰ったストラップ触りながら、沙織は言った。


「まだ私…ケータイ持ってないんだ…お父さんにお願いして買って貰ってから……中谷君の番号教えといてよ、私…家の電話からかけるから……」