機嫌よく生卵を二つ割り、自分で買ってきた箱の酒をグラスに注ぐ板前さん……。 「お父さん…何で…勝手に……どうやって部屋に……」 「管理人に言ったらよ、鍵貸してくれてよ、父親なんだから当然だよな」 目の前は真っ暗闇……やっと手に入れた城が、今…涙池に沈んだ。 「そんなとこ突っ立ってないで、早く肉食べろ、口の中でとろける肉だぞ」 テレビではお笑い番組がやっていた。 肉を頬張り、酒を喉に流し、タレントのギャグに低い声で笑っている板前。 この人は誰? 誰ですか? 愛する人でも、肉親でもない。