過去の秘箱



酒に酔っていた板前は、ひっくり返り、大きな口を開けてイビキをかいていた。


殺したい……ぐらい憎たらしい。


殺しても殺しても、まだ足りない。


百回…二百回殺しても、まだ許せないよ。


「出ていってよ!」


涙の洪水押し寄せる瞳で、沙織は腹の底から大きな声を出した。


「今すぐ、出て行け~」


「はぁぁ~」


寝惚け眼の義理父が、細い目を開ける。


そして、ゆっくり起き上がりうつ向いている。


じっと黙っている。


「今すぐ出て行って!この部屋に、誰を呼ぼうが私の勝手じゃない!
私の部屋なんだから!何で?お父さんが友達を殴る訳?
そんな事するからね、お母さんも私も詩織も逃げていくのよ!」