時は少しばかりさかのぼる。


この父親がまだ正常だった頃に戻ろう。


父(下田正男)は、沙織の実の父親ではなかった。


沙織は、母(典子)の前の夫の子供。


幼い沙織を連れ、典子は正男と一緒になった。


それから二年後に詩織が生まれる。


妹の詩織は、正男にそっくりな顔形、人からは、コピーや捺印だとからかわれるぐらいよく似ていた。


それと反対に、沙織の方は母親にそっくり、小さな頃から典子のミニチュアのようだった。


それが成長するごとに、ますます、お互いはそれぞれ親に似てきた。


妻に逃げられた男が、義理の娘、沙織を典子に見立てエッチな行為に至った事……顔形、しぐさ、声が似ているからと……もしも言い訳に使えるなら、絶対にあげられる条件だった。