あの子のために雪は降る

腕を組んで睨むような目つきで見ていると、ガキが俺の存在に気がついた。

ヘンチクリンな走り方でここまで来たガキは、俺の足にしがみついてビービーやかましく泣き始めた。


「あー…何だってこんな目に遭わなきゃならねえんだ…厄日だぜ。」


俺は顔に手を当てて、涙と鼻水で湿ったズボンの暖かさを嘆いた。

ガキに悪気も無ければ何一つ悪い事はしてない。そんな事は百も承知さ。

ただ相手が俺ってのが間違いだ。
俺は子供好きでもなけりゃ兄弟も居ねえ。
こんなガキの面倒なんざ観れるはずがないんだ。

なのにガキはまるで自分の兄ちゃんみたいにしがみついて離れない。

このままじゃ動けない上に怪しまれる。
俺は何気なしにガキの頭を撫でながら語りかけた。


「わかったよ、もう逃げねーから泣き止めよ。
鼻水ベチャベチャじゃねーか…。」


思った以上に暖かくサラサラした頭に驚きながら、ガキのベチャベチャになった顔を見つめた。

そして足から引っ剥がすと、足元に落としたぬいぐるみを押し付けて「追いて来い。」と、先を歩き始めた。