あの子のために雪は降る

「ふぅ、ガキから逃げるなんざヤキが回ったもんだぜ…。」


俺はそう呟くと、残りわずかになった家路を歩き始めた。

その時、今自分が走って来た方向から子供の泣き声がした。

間違いなくあのガキだ…。


俺は一瞬にして答えが出た事に嫌気がさした。
この閃きがテストに生かせれば、もう少しましな人生を歩んでいたかもしれないと…。

耳を澄ましてみるとだんだん声が近づいて来るのがわかる。

俺はシカトして帰るか、様子を見るかイライラしながら悩んだ。
何でガキ一匹のために俺が振り回されているのか理解に苦しんだからだ。


地面にかがみ込んで頭を抱えていると、角からガキの姿が現れるのが見えた。

ぬいぐるみのクマの手を掴んで地面を引きずっている。
もう片手で涙を拭いながらヒョコヒョコと歩いていた。

膝に泥が付いている所を見ると、俺を追いかけるうちに転んだんだろう。


俺はもう一度ため息をつくと、腹を決めて立ち上がった。