あの子のために雪は降る

思った通り。
そこには先程と全く変わらない距離にガキが立っていた。

俺は頭をガシガシとかきむしると、クールになれと自分に言い聞かせた。


「いいか嬢ちゃん。ママから習わなかったか?怪しい人には追いて行くなってよ。
俺は怪しいお兄さんだ。追いて来たら駄目なんだよ。解ったか?解ったら帰りな。」


俺は気持ち悪いくらいの優しい声でそう言った。
だが、ガキは頭を横に振って動こうとはしなかった。

真っ直ぐに俺の顔を見上げて何かを言いたそうにしている。
俺はため息をつくと、その場から走り去った。


「あー!めんどくせえ!」


アイツと俺とでは足の長さが全然違う。少し走れば撒けるだろう。

背後から小さく「あっ!」っとガキが言ったのが聞こえた。
少しだけチクリと胸が痛んだが、気のせいだと自分に言い聞かせた。


そしてしばらく走った後、息を切らせて立ち止まった俺は後ろを振り返った。