あの子のために雪は降る

確かに言われてみればそんな時期だ。
だからといって特に何もない。毎年の事だ。


「ああ、そうだな…。」


俺はどう答えたらいいのかわからずに、相づちだけ適当に返した。


「お兄ちゃんは…サンタさんって信じてる?」


すずめは目をキラキラさせてぬいぐるみを抱き締めた。

サンタなんて奴は居ないとわかっている。神も仏も俺は信じちゃいない。

でもガキの夢まで奪うほど腐ったつもりもなかった。


「髭を生やしたオッサンだろ?プレゼントくれる。」


その答えにすずめは満面の笑みで頷くと、手にしたぬいぐるみを差し出した。


「アンソニーはサンタさんがくれたんだよ!」


俺は意図がつかめずに頬をかいた。


「そのクマ…アンソニーっつーのか?そりゃよかったな。」


「うん!お兄ちゃんは何もらったの?」


すずめは突拍子も無い事を言い出した。
俺は今までろくな物なんてもらった事が無い。
当然我が家にはサンタなんて気の利いたオッサンが来た事も無かった。

俺は何か無いかと周りを見渡した。