俺はお前だけの王子さま

「…………」


黙る俺に
渡瀬母は顔を上げた。


「ただ…振込み期限がかなり過ぎてるんだけど…直接渡せば間に合うかしら…」


心配そうに案内書を読み返す渡瀬母。


「担任に確認したら、大丈夫って言ってた。」


平然と答える俺に
渡瀬母は目を丸くして俺を見た。


「本当に…?」


俺は頷く。


「俺、修学旅行の委員なんで」


俺の言葉に渡瀬母は安堵の表情を見せた。


「良かった…じゃあ明日愛子に持たせるわね」









俺が工場を去る時
渡瀬母は最後まで俺に礼を言っていた。





俺はそのまま
足早に高校に向かった。


雨のせいか
辺りはかなり薄暗い。



腕時計をみると


18時を越えようとしていた―……