渡瀬母は中身を見て目を大きくした。


「そんな…こんなの受け取れません」



…言うと思った。


「別に…ゆっくり渡瀬に返してもらえば良いんで。夏休みにでもバイト出来るし」


渡瀬母は困惑の顔で俺を見た。


「…ありがとう。あなたの気持ちは嬉しいけど、やっぱり受け取れないわ」


そのままお金を俺に返してくる。


「君の大切なお金でしょう?
簡単にお金を人に貸したら駄目よ?それにね、13万くらいの貯金はあるのよ」


渡瀬母は微笑んだ。


「あの子には普通に大学も行かせたいし…奨学金は必要だけど、うちにもそれぐらいの余裕はあるのよ。」


そして
渡瀬母は俺に向かって深々と頭を下げた。


「だけど…君が教えてくれなかったら私はあの子を悲しませる所でした。母親として取り返しのつかない過ちを犯す所だった。本当に…ありがとう。」


頭を下げたままの渡瀬母。



表情はわからないが
最後の声が少し震えた。