俺はお前だけの王子さま

「今日はすき焼きだからね~」


笑顔でバタバタと用意しだす
渡瀬。


「あ…、手伝うよ渡瀬さん!」


ヒロキが玄関からリビングへ
一歩足を踏み出した時―…


床が大きくミシッと鳴った。


「!!」

動きが一瞬止まったヒロキ。


俺も止まる。


「ありがとう~2人とも入口にいないで中に入ってきてね」


俺たちとは対称的に
何事もないような笑顔の渡瀬。


「………」


次は俺が入ろうとすると
また床がギシッと鳴る。


ギシ…ギ…


「………」


なにこの床…大丈夫なのか?


俺とヒロキは顔を見合せた。


相変わらず、ただひたすら料理に取り掛かる渡瀬。


渡瀬はこの音に気付かないのか?




ギシギシ…

ミシッミシ…



長身の俺とヒロキが入ると
狭いリビングは圧迫感を増した。


「水梨くん、こっちで野菜切る?」


渡瀬の声に笑顔で反応するヒロキ。


「あ!任せて!」


ヒロキは台所の渡瀬に並んで
手伝いだした。