俺はお前だけの王子さま

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秋になり渡瀬の就職先が決まった。


ギリギリまで進路を迷っていた渡瀬は進学よりも就職を取ったらしい。


自分で決めて自分で歩みだした渡瀬。


自分は弱いと俺の腕の中で泣いた渡瀬は十分強い。


凛とした渡瀬の背中を見て


嬉しいはずなのに、少し寂しく感じる俺もいる。


自分が渡瀬を置いていく癖に


出来るなら
俺の傍に置いておきたい。


強くならなくていい。


俺が守ってやるから


俺だけを見てて欲しい。



そんなの間違ってると頭ではわかっていても


感情がついていかない。


小さい頃に求め損ねた感情が
今になって爆発しそうになる。


今の俺は駄々をこねる、まるでガキだ。



そんな自分をごまかすように
ギリギリの無表情でいつもの俺を装う。


欲しいものが出来て初めて

俺は自分がこんなにも無力だと知った。


ただ傍にいて欲しいだけなのに
それがこんなにも難しいなんて


砂時計が音をたてて流れている気分だった


俺と渡瀬のタイムリミットまで


あと少し