俺はお前だけの王子さま

「渡瀬、」


「ん?」


俺の声に振り向く渡瀬。


「なに?」


「…………」


黙る俺を不思議そうに見つめる渡瀬。


何もわかっていない無防備な渡瀬に、独占欲剥き出しの言葉を言ってやりたくなる。



だけど―…


俺は言いかけた言葉をしまって代わりに渡瀬の首筋に唇を近付けた。


「あっ…」


渡瀬の体がぴくんとなる。


俺は構わずに首筋にキスを落とす。


そしてゆっくり吸ったあとで、俺は首筋から離れた。


そんな俺を渡瀬は困惑ぎみに見る。


「…え、なに…?///」


俺は渡瀬の首筋に目をやった。


白い渡瀬のうなじ近付くには、鮮やかな赤い痕が残っていた。


「…別に。つか早く用意しろよ」


俺は腰をあげると出口に向かった。


もうそろそろチャイムもなる頃だろう。


「えぇ?あ、うん?」


渡瀬は少し慌てて制服の最終チェックをすると俺の後に付いてきた。


そんな渡瀬を見て、俺は余裕を取り戻す。




俺は全然、強くない。