音楽室の中に入ると内側から鍵を閉める。


そのまま渡瀬を壁に押し付けると俺は強引に渡瀬の唇を奪った。


廊下からチャイムが聞こえる。


初めて渡瀬とここに来た冬から俺はたまに、ここに渡瀬を連れ込んだ。


3年になりクラスが離れ…


卒業まであと1年もなくなった


気持ちの整理ができないままにタイムリミットばかりが近付く


渡瀬を手放さなきゃいけないその日に近付く程に


俺の心は渡瀬を求めているようだった。



俺は一度、渡瀬から唇を離すとバサッと上着を脱ぎ捨て、窮屈なネクタイを外した。


そしてもう一度、渡瀬の唇をふさぐと渡瀬の制服のボタンを外していく。


「…っ」


濡れた渡瀬の唇から小さな声がもれる。


同時に渡瀬の頬に涙が伝った。


「うぅ…」


唇を離すと渡瀬は顔をくしゃくしゃにした。


「王子くんが好き過ぎて…自分がどんどん弱くなるよぉ」


泣きながらそんな事を言う渡瀬


「王子くんばっかり頑張ってる。私も強くなりたいのに」


俺はそんな渡瀬を抱き締めた。


小さく震える渡瀬の頭を胸に抱きしめながら、胸が締め付けられる思いがした。


俺は強くない。


渡瀬みたいに素直じゃないだけだ。



渡瀬の台詞はそのまま俺の気持ちだった。