《渡瀬さんが王子くんを庇ってあの桂に意見したらしいよ》


そんな噂は尾ひれをつけて生徒に広まっていった。


《渡瀬さんは桂に責められても泣いて抵抗していたらしい》


《え?!なんか桂に手も上げられたらしいよ?》


《うわぁ、桂最低…》


《その泣いていた渡瀬さんを、王子くんが現れて助けたらしいよ》


《私、お姫様抱っこで連れ去ったって聞いたんだけど!》


《うそ?あの春馬くんが?》


《ヤバ~い!それめっちゃ見たかったぁ》


廊下を歩く俺はいつもに増して視線を感じていた。


俺がお姫様抱っこって…

そんなんありえねぇだろ

ちょっとは考えろよ…


歩きながら自然と俺の眉間にシワが寄る。


「くく…」


隣を歩くヒロキは笑いをこらえている。


《渡瀬さんって意外とやるよね》


《私リアルなところ、彼氏のためにそこまでしないわ―…》


《さすが王子くんの彼女だと思った》


《うんうん、彼女が一方的に言い寄ったのかと思ってたけど…王子くんも彼女が好きなんだね》


《渡瀬さんってよく見たら可愛いしお似合いだよね》


《いいなぁ、憧れる~》


「うんうん、憧れるよね~」


ヒロキが少し大きな声で真似して言うと、噂をしていた女子は頬を赤めて口をつぐんだ。