俺と渡瀬は庭を見た後、本家の方にも来た。


書斎や茶室、応接間


両親や姉が不在でも、常に管理はされていてどこも綺麗なままだ。



書斎に置かれた本棚。

渡瀬は本を手に取りパラパラと中を見た。


「馬…?」


馬と呟いた渡瀬は

本を棚に戻しながら振り返って俺に聞いてきた。


「王子くんの家は何をしてるの?」



「まぁ…色々だけど。メインは貿易だな。」


俺はそんな渡瀬に近付くと渡瀬の背後に立った。


ぴくり…

渡瀬の背中がかすかに反応する。



俺は渡瀬の後ろから腕を延ばすと渡瀬がしまった本にふれた。


「…ちなみにこの本は親父の趣味」


渡瀬の目の前に並んだ馬関係の本を指先で触る。


「俺の名前も親父に付けられたから」


「へぇ…そうなんだ」


渡瀬は少し耳を赤くして笑う。


「でも良い名前だと思うよ。私は好きだなぁ…」


そう言いながら、少し首を回して俺を見上げる渡瀬。


目が合うと、渡瀬の瞳が揺れた。