「今日もお母さん遅いの?」 『そうですね』 ゆっくりと進む足取りが 重くなった。 お母さん…… 久しぶりに聞いた単語。 お父さんは今、出張で家に居ない。 お母さんは毎夜毎夜遊び歩いている。 「梨子ちゃんと涼ちゃんは?」 『友達と遊んでると思いますよ』 梨子は私の三歳離れた妹。 そして涼は十歳離れた弟。 「本当に偉いわね…たまには梨子ちゃんと涼ちゃん預かるわよ?真奈美ちゃんもお友達とお出かけしたら?」 吉野さんの優しい言葉が 私を包み込む。