甘い疑惑の王子様



まるで戦場のように
我先にと前へと押し進む人達。


端から見れば
絶対に入りたくないだろう…


『うぅぅ……』


ぎゅうぎゅうに押し潰されながら
必死に野菜を手に取る。


「真奈美ちゃん!こっち!」

『はっはいぃ…』


吉野さんの声を頼りに
わずかな人と人の隙間をくぐり抜ける。



『っぷは』


圧迫された中から
やっといつもの空気の流れが戻ってきた。


「いい感じ?」

『結構ですね♪』


吉野さんは満足そうな顔をして
先に事を済ませたようだった。