甘い疑惑の王子様



――プップッ……プルル


呼び出し音が鳴る。


遊び盛りの中学生に
最近お父さんから贈られてきた
梨子への携帯。


私にもと貰ったが
あまり役には立っていない。



「……はい」

受話器の向こうで
梨子の声が聞こえてきた。


『梨子、何時だと思ってんの?早く帰って来な』


「うっさいな。そんな事で電話掛けてきたわけ?」


いつもの冷たい声が
耳を通る。


『そんな事じゃないでしょ!今どこ』

「……関係ないじゃん」

『関係あるからっ!!』


受話器からは
梨子の友達らしき声が
飛び交っているのが分かる。