甘い疑惑の王子様



そしてその表情も一瞬だけだった。


彼は私から視線を反らし
私の後ろを見ていた。


ん?

それを追うように
私も後ろに視線を移した。



あ……やばっ


そこには大勢の人が
教室の窓越しから私達を見ていた。


ここ学校だっけ……

その光景を見て
私は現実に戻るかのように
肩を落とした。



「ごめんね。突然来て」

私に振りかかる優しい声に
慌てて顔を上げた。


『全然っ!……嬉しかった…です』


どんどん小さくなる声に
自分が言った事が恥ずかしくなる。


「本当に?」

『…はい!』

「来てよかった」


彼の優しい笑顔で
私もつられて笑顔になる。