「ま、まさか…本物」

唖然とした美形の従者の首に、いつのまにか接近したアルテミアの手が差し込まれていた。

「てめえらの親は、誰だ?ネーナか?」

片手で、美形の従者を持ち上げると、アルテミアは下から睨み付けた。

「いや〜違うな。こんな手の込んだ陰湿なことをするのは…」

アルテミアが、その名を口にしょうとした瞬間、

「チッ」

舌打ちをしながら、美形の従者を離した。

「陰湿とは、誰のことかしら?」

いつのまにか凍り付いた美形の従者の真上に、腕を組んだマリーがいた。

ストレートの長い髪に、氷のような微笑を口元にたたえながら、ゆっくりと降りてくると、氷付けになった美形の従者を踏み潰した。

破片となって、飛び散る氷と肉の塊。

「あなたも一応は、魔王の娘。自分の従者くらい持っていても、いいんじゃないの?だから、こうやって」

マリーの言葉の途中で、アルテミアの蹴りが放たれた。

しかし、マリーは人差し指一本で、アルテミアの蹴りを弾いた。

「くそ!」

アルテミアはすぐに、バランスを立て直すと、どこからか飛んできた回転する2つの物体を掴んだ。

そして、槍にすると、脇に挟み…アルテミアは腰を屈めた。

女神の一撃の構えである。

その姿を見て、マリーは目を細めた。

「忌々しい…武器」

マリーの目は、アルテミアを見てはいなかった。

その脇に、挟まれた槍を見ていた。

「く!」

顔をしかめたマリーの脳裏に、白い鎧を身につけたブロンドの女の姿がよみがえる。

「マリーイイイ!」

アルテミアの感情に呼応して、槍に電気が絡み付く。

「フン」

その様子を見て、マリーは鼻を鳴らすと…アルテミアに背を向けた。

「な!?」

驚くアルテミアの耳に、上空へと去っていくマリーの声が飛び込んできた。

「あんたは知らないようだから…もう用はすんだわ」

マリーは肩をすくめ、

「一応、今日は殺さずにいてあげる。今のあたしの気分に感謝することね」

そのまま、町から離れていった。