「ええ!どうして、僕なんですか!」

驚く僕に、ロバートは言った。

「君は、アルテミアと融合している。眷族を倒すなら、君達が適任だろう」

「で、でも!2人の女神がいるかもしれないのですよ!アルテミアでも」

そこまで言いかけて、僕は言葉を止めた。

迂闊に言葉にしたら、アルテミアに殺されるかもしれなかった。

口を摘むんだ僕は、自然と無言になってしまった。

数秒後、ロバートは言った。

「防衛軍に問い合わせてみるよ。何かわかるかもしれない」

「お願いします」

「わかり次第、連絡するよ」

通信は、終わった。

僕はカードを内ポケットにしまうと、前を見た。

数キロ先に、町が見えた。

「遠いな」

カードを使って、乗り物を召喚できたけど、その気はなかった。

あまり、ポイントを使いたくなかったのだ。

できるだけ消費は、少なくしたい。

(まあ〜アルテミアに変われば、一瞬で使ってしまうんだけどな)

僕は歩きながら、アルテミアに話しかけた。

「アルテミア。あの女の人がいう夕刻の谷って、どこにあるんだろうね」

問いかけても、返事がなかった。

前にもこういうことが、あった。

(結構、繊細なんだな)

悪名高きブロンドの悪魔と呼ばれるアルテミアではあるが、人々の噂程ではないと、僕は思っていた。

こんな時は、しつこく言っては、駄目である。

僕は諦めると、少し歩く速度を速めた。

(あの町に、手掛かりがあるかもしれない)

そう思うと、気持ちが急かした。

速足から、走るに代わった頃、僕は妙な違和感を感じた。

普通、町に近づけば、少しは活気や、人の息吹を感じるはずだった。

それなのに、何も感じない。

「どうなっている?」

数分後、町に入った僕は、絶句した。

まるで、ゴーストタウンのように静まり返っているのだ。

「人々は?」

異世界の町では珍しく…中央に、巨大な高層ビルが立っていた。

そのことが物語るのは、この町は相当、治安がよく…さらに、強力や軍隊が駐留しているということになる。