(何なのよ……もう)



チクチク、チクチク。



課長と瑞樹の会話する声が
耳に入るたびに、あたしの
胸は小さなトゲが刺さった
みたい。



課長が『瑞樹』って呼ぶ
のが特別じゃないのはわかった。


彼女は部下全員を、名前を
呼び捨てにするんだ。



(わかってる。

だけど、それでも……)



それでもその名を呼ぶ
艶っぽい声を耳にすると、
あたしはどうしても
イラッとせずにはいられ
ない……。



(――ダメだ、こんなん
じゃ仕事にならない)



胸の内のささくれがピーク
になって、あたしは思わず
ガタッと椅子を鳴らして
立ち上がってた。