瑞樹はスタスタと中に
入ってきて、空席になった
あたしの隣の席――つまり
瑞樹自身の席にその袋を置いた。



首を伸ばして中身を確認
すると、大きなマグカップ
みたいなコップ状の物が
ふたつ入ってる。


いい匂いがしてて、すぐに
近くにあるスープ専門店の
テイクアウトだってわかった。



「夜食。

お腹すいてるでしょ」



「え? え??」



つまり、わざわざこれを
買って戻って来たの?

ふたつあるってことは、
自分も食べるつもりで?



「やだ……帰ってて
よかったのに。

こないだまで散々
忙しかったんだから」



撮影が終わって、瑞樹の
仕事はやっと普通の
忙しさに戻った。