《完》オフィスでとびきりの夜を

課長がいなくなった空間に
残されたのは、静寂。



あたしも瑞樹もしばらく
石のように押し黙ってて、
なんの言葉もない。



永遠に続くかと錯覚
しそうな沈黙だったけど、
やがてその沈黙を少しだけ
ハスキーな声が破った。



「……オレも、沙織さん
から莉央は来ないって
聞いてたよ。

―――なんで、来たの?」



「……………!」



“なんで来たのか”



その言葉には“見学に
来た”って意味だけじゃ
なく、“どうして今ここに
来たのか”って意味も
込められてる。



そう気づいたから、
すぐには言葉を返せなかった。



瑞樹はきっともう気づいてる。


あたしが大きな決意をした
うえで、今日ここに来たん
だってこと。