《完》オフィスでとびきりの夜を

だけどそんな圭輔が自分が
呼ぶのと同じように、
莉央のことを名前で呼んだ時――


瑞樹は嫉妬に近い穏やかで
ない感情が駆け巡るのを、
ハッキリ感じた。



そして今またそんな感情が
自分を支配して、瑞樹は
固まったように動きを
止め、壁際の二人を
凝視する……。



(何……話してんだよ……)



周囲を取り囲むスタッフの
ことも忘れ、ジッと目を
こらしていると――莉央が
圭輔の言葉に反応して、
うすく笑みをこぼした。



「……………!」



その途端、細い氷の針が
刺さったように鋭い痛みが
胸を走る。



――莉央が、笑っている。



ここ数週間、自分の前では
もう笑うこともなかった莉央。