わざと逸らした事は、大地にも分かっただろう。
だけど今のあたしには、大地の目を見て笑う、なんて事は出来そうにない。


「あ!大地君!」


華耶は明るい声でそう言うと、机の上のレポート用紙と筆箱をバッグにしまい始めた。
その明るい声も、笑顔も、全てがあたしの癪に障る。
やっぱりあたしは華耶の事を許せていない。

それでも感情を押し殺し、笑顔を作る。


「ごめんね!ばいばい」


華耶は大地の元へ行き、二人は肩を並べて歩き出した。

悔しいけれど、正直羨ましい。
ああやって肩を並べて歩いて、放課後デートして。
あたしが何度も夢見て、そして叶わなかった夢。

きっとこれから華耶は、あたしの叶わなかった夢を、どんどん叶えていくんだろう。



「……なんか、ちょっとイラッとしたかも」