「ねぇねぇ!華耶彼氏出来たんだって!」


一番聞きたくなかった言葉を、朝っぱらからあたしに浴びせる美津菜。


「……知ってる」


「なんで!?」


皆の声がうるさい教室の中でも、キンキンと頭に響いて来る美津菜の声。


「おはよ!」


美津菜の後ろから華耶が、いかにも“幸せまっただ中です”という様な笑顔を見せる。
あたしは華耶と目を合せないようにしながら、「おはよう」と小さな声で答えた。
こんな騒がしい教室の中では、あたしの声など華耶の耳には届いていなかったと思うけど。

昨日、華耶からのメールは一通も届かなかった。
初めは悲しさでいっぱいで、他の感情など何も湧いて来なかったけれど、後から華耶に対する怒りが沸々と湧き起こってきた。

あたしが大地を好きな事は知っているにも拘わらず、何であたしの目の前で告白したの?

大地の事を好きだと打ち明けた時、華耶、笑って応援するって言ってくれたよね?

あれは全部、嘘だったの?


あたしは華耶をもう一度見た。
一瞬目が合ったけれど、華耶はわざとらしく目を逸らした。
そんな華耶の行動一つ一つに腹が立つ。


駄目だ。こんなこと思っちゃ……あたしが、いつまでも告白出来ずにいたのがいけないんだ。


「後で話があるんだけど……」


華耶が、あたしの耳元でそう声を掛けて来た。
一瞬迷ったけれど、素直に従う事にした。