「大地君!」


この可愛らしい声には聞き覚えがあった。

後ろを見ると、思った通り華耶がいつもの様にニコニコと極上の笑顔を見せながら立っていた。


「今日の練習っていつもより長いんだよね?」


華耶はあたしの存在おかまいなしに大地に話し掛ける。

今あたしと大地が話してたんですけど、そんな思いをグッと堪える。

そういえば、誰かが言ってたな。
恋には我慢も必要だと。


「ああ。明日練習試合だからな」


「そっか!ありがとう。
ごめんね姫月!話中断させちゃって……」


「うん…大丈夫だよ」


いきなりの謝罪に、少し戸惑いながらもそう答えた。

やっぱりあたしの思い違いなのかもしれない。
今だって、別に華耶は部活の事で聞きたかっただけ。
深い意味なんてない。


「てか姫月、次体育だから急がないと間に合わないよ!」


「え!?」


「大地君じゃあね!」


華耶はそう言ってあたしの手を引っ張ると、あたし達の教室へと歩き出した。