教室を出る華耶の後ろについて行くと、華耶は隣の空き教室の中へと入って行った。

その途端、嫌な予感が頭をよぎる。
こんな人の居ない所に呼び出して、また何かするつもりなのではないだろうか。


そんな横で一緒に足を止めていた美津菜が教室へ入って行ったのを見て、あたしも後に続いた。

大丈夫。
一人じゃないんだ。

そう思ったから。


教室の中を見ると、教卓が黒板の前にポツンと佇んでいて、その横に幾つかパイプイスが立て掛けてあった。
机は無く、いつも使っている教室と同じとは分かっていても、一回り広くなった様に感じられる。

華耶は、中央まで進むと振り向いて、あたしと美津菜に向かってこう言った。


「……ごめんなさい」


弱々しい声でそう口にした華耶を見て、あたしと美津菜は顔を見合わせた。
美津菜もやっぱり警戒していたようで、面食らった表情をしていた。

多分あたしも同じ様な表情をしているだろう。


「ごめんって、何の事?
もしかして、あたしや姫月の好きな人にちょっかい出した事?」


まだ少し驚きの色を見せながらも、美津菜は華耶にそう質問した。
淡々とした声、だけどそのまなざしは冷淡で、まだその警戒を完全には解いていないようだった。