涙飴

五十嵐には沢山の物を貰った。
だけどあたしからは何もあげられていないし、あげられる自信もない。


そんなあたしと五十嵐が釣り合う訳がないし、周りの反応を見るのが怖い。


もっと可愛いくて、もっと明るくて、もっと五十嵐の傷を癒せる様な子が五十嵐の側に居るべきだ。

そんな事くらい、あたしだって理解している。







「ちょっと、話したい事があるんだけどさ……」


あたしが丁度最後まで残して置いた卵焼きを口に入れるのと同時に、聞き慣れた声が頭上から聞こえた。



「華耶……何？」


美津菜は邪険なまなざしで華耶を見上げる。
華耶は、そんな美津菜のあからさまに嫌がっている様子に少し怯みながらも、言葉を返した。


「……どうしても、伝えたい事があるの」


そんな華耶の表情からは、それを疑う様な所は何一つなかった。

あたしは何も言わずに美津菜に視線を向けた。
美津菜の判断に従おうと思ったからだ。
とは言っても、美津菜の答えはなんとなく予想はついていた。

だけど美津菜は、その予想を覆す答えを出した。


「……分かった」