その言葉の意味を理解する前に、耳元でまた五十嵐の声がした。


「好きなんだよ…お前の事」


その瞬間、今まで飲み込んだ言葉たちが涙となって溢れ出す。

こんなにも、こんなにも溢れて止まらないのに、何も伝えられずにいた。


心臓が狂った様に鳴り、顔も体も熱く、耳元では五十嵐の吐息が聞こえる。


これは、現実なのだろうか。

そんな疑問さえ生まれた。

『好き』という言葉も、頬を伝う涙も、何処か現実味を帯びていなくて。

まるで幻想の世界での出来事の様だった。


ただ、口の中に広がる甘さだけが、あたしを現実の世界へ連れ戻す。






「小野寺が理由で涙流すんなら…



お前の涙は俺が全部拾う。

全部拾うから…」