「好きじゃ、ないよ」



あたしは、小さな声でそう呟く。

それは、華耶に向けてと言うよりは、自分自身に言い聞かせている様であった。


目の前の華耶は、予想外の言葉にびっくりしているといった様子だ。


だから、もう1度、今度はちゃんと華耶に聞こえる位の声で


「五十嵐の事好きじゃないよ」


と言った。


「もう、美津菜といい華耶といい…皆勘違いし過ぎ!

確かに五十嵐には色々とお世話になったけど、そういう感情はこれっぽっちも無いから。

だから、遠慮なく五十嵐に告白していいから。
応援してるよ!」


口が、勝手に動く。

頭の中で、自動的に言葉が並べられ、それがスラスラと声になって溢れる。



「えっ…でも…」


華耶が複雑な面持で何かを言いかけたけど、あたしはそれを遮る様にその場で立ち上がった。

そして、華耶の横まで行くと、華耶の細くて白い腕を掴み、立ち上がらせる。