大地は少しの間を空けてから、それに答えた。


「…正直、自分でも良く分からない。

全く気にならないって言えば嘘になるし、だからって自信をもって好きとは言えない」


そう話す大地の表情には、作り笑いすらなくなっていた。
その姿からも、大地が辛いのは痛い程分かる。



「そっか。
大地は、華耶のこと忘れたいの?」


その辛さの原因が知りたかった。

それは決して好奇心からではなく、純粋に大地の辛さを取り除いてあげたいという気持ちからだった。


もう好きではないとはいえ、幼馴染みだし、放っておく事などあたしには出来なかった。



「うん…もう前みたいな気持ちになることはないと思う。
だけど…忘れたいって訳でもないんだ。

九條と居た毎日は、結果的にはこういう終わり方だったけど、凄く幸せだったし、初めて人を純粋に愛する事が出来たっつーか…


俺にとって、今でも大切な記憶なんだ。

過去があるから今の俺が居る訳で、その記憶がなければあの時感じた幸せを知らない俺のままだった。


なんかすげーくさい事言ってるけど…」