蛇口から止まる事なく出る透明な水。
その水の様に止まる事なく出る苛つき。


包丁が食材を切るトントンという規則的な音が更にその苛つきを加速させる。


あたしは皮を剥いた玉葱を、目の前にあるボウルの中に放り込んだ。



「あー、姫月乱暴過ぎだよぉ。ね?五十嵐君」


そう言って華耶は隣でピーマンを切る五十嵐を見る。

五十嵐はその視線を無視して、ひたすらピーマンを切っている。


「…はぁ」


華耶はそう小さく溜め息をつくと、また包丁を動かし始めた。



「華耶も流石にダメージ受けてるね。
ま、自業自得か」


すかさず隣で玉葱の皮を剥いていた美津菜が小声で話し掛けて来た。


「ていうかもう来ないもんだと思ってたのに、ここに着いたら華耶が居るから本当びっくりしたよ。
…来なくて良かったのに」


美津菜はいかにも不機嫌そうな表情でそう言うと、剥き終わった玉葱をボウルの中に入れた。