五十嵐は卵焼きを箸で掴むと、口の中へ入れた。

これも間接キスって言うのかな……なんて、変な事を考えてしまうあたし。


「旨いじゃん」


笑った顔を見たら、何だか恥ずかしくなった。
箸ごときで何考えてるんだろう。
いちいち意識し過ぎだ。


「……で、何があった訳?」

「へ?何って……」


あたしはタコさんウインナーを頬張りながら聞き返す。
何となく分かってはいたけど、聞き返してみた。


「だから、さっき教室でケンカっぽくなってただろ?
あの後クラスの皆が九條の事見て……同中だった奴が『どうせまた人の彼氏でもとったんじゃない?』って言い出してさ。
そしたら皆がそれに便乗して、九條、泣きながら教室出て行った」


少し可哀相だと思った。
種をまいたのは華耶だけど、あの状況で一人にしたのはあたしだ。


「そっか……」


可哀相だとも思ったけど、正直自業自得だとも思う。
こんなあたしは酷いのだろうか。


「悠士の事だろ?榎田がキレた理由」