美津菜は階段をかけ上がり、屋上の扉を開けた。
あたしはその背中を追って、扉を開ける。


「美津菜!」


振り向いた美津菜の顔は、涙で濡れていた。


「姫月ぃ~」


あたしは美津菜を抱き締めた。
屋上には何人かお弁当を食べる生徒が居たけど、その視線は気にならなかった。
美津菜はあたしの腕の中で、肩を震わせている。


「……ごめ…ん。我慢…出来なかった」


「何で謝るの?美津菜凄いじゃん!
ちゃんと自分の気持ち言えて」


すると突然、お腹辺りに振動が伝わる。


「美津菜、携帯……」


美津菜も振動に気付いて、セーターのポケットから携帯を取り出して開いた。
その内容は美津菜の瞳から流れる涙を止める。


「姫月!ごめん!……鳴海からメールで一緒にお昼食べないかってきて」


「早く行ってきなよ!あたしの事はいいから」


「でも……」


「あたしの事は気にしないで。ほら!早く!」


あたしは美津菜の背中を優しく押した。


「……ありがとう」


そう言って屋上から出て行く美津菜の後ろ姿に、あたしは母親の様な視線を送る。


「……どうしようかな」


取り敢えず、段差に腰を下ろす。
途端に空腹感が押し寄せて来た。けど、お弁当は教室だ。今、教室に行く気にはなれなかった。


「お腹すいたー」


気を紛らわせようと携帯を開くと、メールが一件届いていた。