【――― 10年後のあなたへ】


10年前のあたしから手紙が届いた。


10年前、か……。

あたしは8歳だ。


ギーッ ギーッとブランコを揺らした。


【10年後はなにしてますか?
こうこうせいですか?】


疑問形ばかりの自分の文章に、つい笑ってしまう。


「あーーっ、もぅー!」


【翔ちゃんは元気ですか?
翔ちゃんとは、仲良くしてますか?】


“翔ちゃん”

忘れていたわけではない。

時々、ふとした瞬間に“翔ちゃん”を思い出す程度。


「翔ちゃん、か……」


今は、何をやっているんだろう。


まだ明るい空を見上げ、あたしは瞳を閉じた―――。


脳裏には、翔ちゃんと過ごした日々が思い浮かぶ。