放課後に近づくにつれ
胸の鼓動が早くなる
学校が終わると足早に
玄関を出て自転車に股がり
一気に走り駅に向かった
いつしか見慣れた
病院への道が今日は
いつもと違って見える

病院へ着くといつものように
彼の母親の病室へ向かう
階段を上がり扉の前に立ち
息を整えてから
トントン…と扉を叩くと
中からはいつも聞く
彼の応答がなく静かだった

私は扉を静かに開き
中を覗くとそこには
信じられない光景が
目の前に飛び込んできた

それは初めて目にした
ベッドに横になっていない
彼の母親の姿だった
髪が長くてサラサラで
色が透き通るほど綺麗で
瞳が真ん丸で大きく
それは一目でもわかるくらい
彼によく似ていた

彼の母親が私に気付き
『こんにちは、空太のお友達?』と
私に尋ねそして優しく微笑んだ

私はビックリしながら
『は、はいっ』と
口ごもりながら返事をすると
再び彼の母親が尋ねた
『あっ…間違ってたらごめんなさいね。もしかしてもえさん?』と
彼の母親の言葉に
私は再び声が裏返り
少しむせながら小さく
『はい』と照れながら答えた