そして電車がホームに停まる
私は彼から荷物を
受け取り電車に乗り込むと
彼はポケットから袋を出し
そして私に手渡した

ピ――っと電車の扉が
閉まる音が鳴り響くと
彼は軽く手を振り笑顔を見せて
『家に着いたら、連絡しろよ』と
言うと扉が閉まる

私は扉のガラスに
手をあてながら
彼の顔を今にも
泣きそうな顔で見ていた

電車が動き出すと
彼も電車に合わせて走り出す
やがて彼の姿が
小さくなる時には
私は大粒の涙を流しながら
扉の前にしゃがみ込んでいた

さっきまで―
彼と繋がれた手からは
もう彼の温もりが消えていた
目をつぶると
彼の笑顔がよみがえり
再び悲しくなった

最近涙を流していなかったせいか
涙がとめどなく流れる
私は椅子に腰をかけ
涙を必死で止めようとしていた

行きの電車は長く感じなかった
時間が帰りの今は
長く感じている

そして段々と見慣れた
風景が目に入ると
彼といたことが
夢だったかのように
切ない現実に戻される気持ちだった

地元の駅に下りると
パンパンと顔を叩き目を擦り
『よしっ』と気合いを入れると
私は改札口を出た

前もって連絡していた
母親が駅に迎えに来てくれ
私は車に乗り込み家に戻った