今日は入学式―
ドキドキして
なかなか寝付かれなかった
眠い目をこすり
嫌々に布団から出る
顔を洗ってリビングに行くと
いつもはいない
父親の姿があった

『おはよう、今日から中学生だな』と
新聞を見ながら
コーヒーを飲み父親は言った
『うん、何かドキドキする』と
トーストをかじりながら
私は答えると
キッチンから母親が
牛乳を持って来て
『今日は、お父さんと、二人で入学式見に行くからね』と
いつもより綺麗に髪をまとめ
化粧を薄くした母親の
綺麗な姿が少し嬉しかった

ずっと伸ばしてきた
自慢の髪をポニーテールにし
初めて新しい制服に袖を通し
鏡の前に立つ
何だか昨日までとは違う
自分に見え少しドキドキした
そして…何だか
楽しい予感が待っているような
わくわくした気持ちで
笑顔もこぼれる

この時の私にはこれから先
自分に訪れる運命の出来事が
待っていたなんて
思いもしなかったんだ
今、思えばこれが
私や彼にとっても
人生で最初で最後の
試練だったんだ