そして俺たちが再会したのは、高校を卒業した1年後のことになる。

同窓会で見かけたリオは、薄暗い場所でもまるであのときと同じように俺の視界に飛び込んできた。
短かった髪は少し色づき大人っぽいボブになっていて、
丸い目の淵にアイラインは刻まれていたけれど、あの15歳のリオと何も変わっていないように思えた。
声をかけようと近づいていくとリオはそれより前に俺に気付いて、居酒屋の座敷から立ち上がって叫んだ。

「あの写真、誰が撮ったの?」

居合わせた同級生たちが一斉に俺たちを見る。
端に座っていた悪友の小野瀬があぁ、あの写真な、と相槌を入れる。

「腕時計の」

リオは言いながら俺を真っすぐに見据えた。
目の奥で、何かが燃えている。俺にはその炎がはっきりと見えた。

「安藤寛さん、だけど・・・」

ああー、そう言ってリオは頭を抱えて座り込み、それからずっと黙っていた。
わけがわからない。
安藤さんは新進気鋭のカメラマンで、当時まだ30前だったが自分の写真集を2冊出していた。
どこか暗いオーラを称えた写真で、特に若い層に人気が高く、俺の写真の別カットも載っていた。
俺は私服の破れたジーンズと履き潰したコンバース、
社長からこういうのを着ろ、と渡された原宿のブランドのTシャツを着て、
古風なワイン色のペルシャ絨毯の上で死んだように寝っ転がった。

後日出来上がった写真は丁寧にも
"彷徨えるエックス・ジェネレーション"という仮タイトルまでついて事務所に届いていた。
社長は嬉々としていたが俺は映っている男が俺じゃないような気がして、そのときは生返事をして、
それ以来その写真は見ていない。