受付のナースが、

「あ……あの、こっ……こちらへどうぞっ」

どこかに案内しようとした。



きっと『院長室』だ。

ジュヨンさん達が、そこへ向かって歩き出す。



そのとき。


チラッ。

こっちを向いて、確かに目が合った。



ジュヨンさんの瞳に、私は映っていたはず。


でも、ね。


軽く会釈をして、そのまま歩いて行っちゃったの。


ズキン。
胸がぎゅうっと、締めつけられる。


やっぱり、私と一緒に過ごした、あの時間は……。

足長さんの中に、一つも残ってなかったんだ。


私にとって、あなたに恋した、大切な思い出なのに。


それなのに――……


――ポタ。

涙が頬を伝った。