「ねえ、知ってた?」

「何を?」


「カン・ジュヨンって、この近くにいたんだって」

「何、それ」


「私の友達、すぐそこの市民病院で働いてるんだけど、この前までカン・ジュヨンが入院してたって言ってた」

「うそっ」


「何か、事故で記憶喪失になってたらしくて、身元が分からなかったから、誰も気づかなかったって――」


「えー!! 知ってたらお見舞いに行ったのにー」



お客さんの噂話が耳に入って、さらにシュンとなる。


足長さん、有名人なんだな――って再確認。



「あ、それにね。その友達によると、『声がいい』って言ってた」

「へー、どんな?」



!!!

……今。

『声』って……言った?



「何か、優しい声らしいよ」

「うわー、聞いてみたい」



チクン。
胸が痛んだ。


私、あれだけ一緒に過ごしたのに……一度も聞けなかったんだよ。