好き、って……。

昨日会ったばかりの、この人を、私が――――?



……、……。

――――ない。

それは、ない。



だって私、今まで――。


生まれてから一度も、一目惚れなんてした事ないもん。



それに、足長さん、記憶がないんでしょ?


どこの、誰なのかも分からないんでしょ?



それなのに、好きだなんて――…。



…………、…………。
…………、…………。



「木崎?」

「へっ」


先輩の声にびっくりして、我に返る。



「冗談……だったんだけど、……マジで?」

「いっ、……いえっ、違いますっ」


私、慌てて否定する。



「ふぅん」

何かを企んでいるかのような、意味深な笑顔で先輩はそう言うと、


「じゃ、明日」


足長さんを連れて、病院の中へ入っていった。