パチパチ……。

大きな拍手で我に返る。



「……あ……」

今のが最後の曲だったんだ。



私は、ジュヨンさんの姿を目に焼き付けようと、ずっと見ていた。


だけど、ジュヨンさん。


……一度もこっちに視線を向けなかった。


何だか悲しくて。
私はそっと、席を立った。



扉の前まできた瞬間、



「(今日、演奏した最後の曲は、ある女性のために作った曲です)」



ジュヨンさんの言葉が聞こえてきて、立ち止まる。



どういうわけか、通訳が入らない。
客席からざわめきが広がる。


ジュヨンさんは構わず続けた。




「(全てを無くした僕に、寄り添ってくれた女性――。暗く孤独な世界にいた僕を、春の日射しのように、優しく包んでくれた)」