――初恋。


清先輩は、中学の頃、軽音部に入っていて。


新入生の歓迎会とか、文化祭で、よく得意な歌を披露していた。



軽音部の部室と、私が入っていた部活、茶道部の部室が隣同士で。


いつの間にか、よく話をするようになって……。

自然に仲良くなった――。



気づいたら、先輩を目で追うようになって。

淡い恋心、ってやつを初めて知ったの。



結局、気持ちを伝えられないまま、

先輩は卒業しちゃって、別々の道に進んだんだよね……。





「違いますっ。ただ……足長さんが……」



目の前にある顔から逃げるように、一歩下がる。




「え?」


「あの、この患者さんがちょっと気になって……」




視線を、足長さんに向ける。



そのとき。



「足長さんって!? 木崎、この人と知り合いなの!?」



先輩がびっくりした様子で尋ねた。